パラスポーツ パラアーチェリーの歴史とルールやクラス分けについてのまとめ。

パラアーチャー アーチェリー

普段なかなか目にすることのないパラアーチェリーですが、どのようなルールで行われているのか?様々な障がいがある方が、どのようにしてその影響を最小限にして競っていくのか?アーチェリーという、障がいの有無に関わらず同一射線上に立って一緒に競技ができる数少ないスポーツについてまとめました。

パラアーチェリーの歴史

1940年代初頭、イギリスのストーク・マンデビル病院にて医師のルートビッヒ・グッドマンが負傷した退役軍人のリハビリテーションとしてアーチェリーを導入しました。
1948年には初めてのアーチェリー大会を開催し、この大会には16名の車いすの兵士が参加。
この大会が後に国際大会へと発展していきました。

パラアーチェリー、その特徴は?

手で弓を引く。という概念だけではない

アーチェリーというと、片手で弓を持ち、もう片方の手で矢をつがえて弦を引く。
そんなイメージがあるかと思います。
しかしパラアーチェリーにおいては、障がいにより手が使えない選手もいます。そのような選手は、口でくわえて弓を引いたり、脚を使って弓を引くなど、それぞれの選手が自分の体に合わせた射ち方をしています。
まさに全身を使っての渾身の一射と言えます。

クラス分けがある

アーチェリー競技では、障がいの種類や程度によって3種類にクラスが分けられています。

パラアスリートにはさまざまな障がいがあるため、同じ競技を同じ条件でプレーをするには限界があります。そのため、クラス分けをして条件を整えることで、同じ競技を行う上で障がいによる影響を少なくし、「障がいが重いから不利」ということなく競技することができるようになっています。

クラス分けはどのようにして行われるのか

医療情報の提出とともに、専門の資格を持った医師や理学療法士、眼科医などが選手との面談や、実際に競技している様子を確認して、運動機能がどの程度残されているのかを判定します。

障がいの進行や回復が予測される選手においては、クラス分けの有効期間が2年から4年程度と設けられているため、定期的にクラス分けを行う必要があり、その状態に応じて適切なクラスで競技に参加することができます。

クラス分けの課題

異なる障がいを持つ選手が同じ競技を公平に行うためのクラス分けですが、課題もあります。
それは、競技のルールが変わることで出場予定種目がなくなってしまうことや、大会間近でのクラス分け判定によりクラスが変わってしまうことで、競技に出場できなくなったり、種目を変更しなくてはいけないなどの問題が発生してしまうことがあります。

アーチェリーの3つのクラスとは

①W1クラス

車椅子使用の四肢麻痺、三肢麻痺、体幹に障がいのある選手

(頸髄損傷などで、手足に麻痺などの障がいのある選手)

②W2クラス

車椅子使用の対麻痺の選手

(脊髄損傷などで、両下肢に麻痺などの障がいのある選手)

③STクラス

立位もしくは椅子に座って競技する選手

弓の種類は2種類

①リカーブボウ

リカーブボウは写真のようなもので、弓に弦を張り、スタビライザーやサイトを装備したものです。

②コンパウンドボウ

上下に滑車のついたコンパウンドボウ

コンパウンドボウは写真のようなもので、上下に滑車が付いており、小さな力で弓を引くとができるという特徴があります。

なお、選手は障がいに合わせて用具を工夫することが認められているため、それぞれの選手が自分の体に合わせた道具で競技に臨んでいます。

競技の種類は

競技の種類としては、W2とSTクラスの選手が使用する弓の種類によって、リカーブオープンとコンパウンドオープンがあります。

そして、最も障がいの重いW1クラスの選手は弓の種類による区別なく、W1オープンという種目となり、3つの種目に分けられている。

〇リカーブオープン

W2とST選手でリカーブを使用して競技します。

122cmの的に向かって、70mの距離で矢を放ちます。
的は中心が10点で外に行くに従い、点数が下がり、1番外側が1点で外すと0点となります。

︎〇コンパウンドオープン

W2とSTクラスの選手でコンパウンド使用して競技します。

80cm6リング標的面と言って、通常80cmで10点から1点までの的を5点までとした的に向かって、50mの距離で矢を放ちます。

的は中心が10点で、外に行くに従い、点数が下がり、1番外側が5点で、外すと0点

〇W1オープン(リカーブ/コンパウンド)

W1クラスの選手で弓の種類による競技区分はなく、リカーブボウを使う選手とコンパウンドボウを使う選手がいます。

80cmの的に向かって50mの距離で矢を放ちます。

的は中心が10点で外に行くに従い、点数が下がり、1番外側が1点で外すと0点となります。

競技種目は?

個人戦

1.リカーブオープン男子

2.リカーブオープン女子

3.コンパウンドオープン男子

4.コンパウンドオープン女子

5.W1オープン男子

6.W1オープン女子

チーム戦

7.リカーブミックス(男女ペア)

8.コンパウンドミックス(男女ペア)

9.W1ミックス(男女ペア)

パラアーチェリーの大会形式

ランキングラウンド

70mもしくは50m先の的を72射行い、その合計点(720点満点)で決勝トーナメントを作成します。

決勝ラウンド(1対1の対戦)

︎〇リカーブオープン

70m先の的に向かって、1射30秒の制限時間で交互に矢を放っていきます。

3射ずつで1セットとし、3射の合計点(30点満点)で競います。勝者に2ポイント、同点では双方に1ポイントが付与されます。

これを5セット行い、先に6ポイント先取した選手の勝利となります。

5セット終了時点で同点の場合には、シュートオフを行います。

シュートオフは1射ずつ射ち、その点数で競います。同点の場合には、的の中心に違い選手の勝利となります。

〇コンパウンドオープン

50m先の窓に向かって、1射30秒の制限時間で交互に射っていきます。

3射を1セットとし、5セット終了時点でその合計点で競います。(150点満点)

同点の場合には、シュートオフを行います。

シュートオフは1射ずつ射ち、その点数で競います。同点の場合には、的の中心に違い選手の勝利となります。

〇W1オープン

50m先の窓に向かって、1射30秒の制限時間で交互に射っていきます。

3射を1セットとし、5セット終了時点でその合計点で競います。(150点満点)

同点の場合には、シュートオフを行います。

シュートオフは1射ずつ射ち、その点数で競います。同点の場合には、的の中心に違い選手の勝利となります。

〇チーム戦

リカーブ、コンパウンド、W1のそれぞれで男女ペアのミックス戦が行われます。

同じ種目の男女2人がペアとなり、ランキングラウンドにおける2人の合計点で決勝トーナメントの組み合わせを決めます。

各チーム2人ずつ、全員が2射ずつ射って1セットとします。

これを4セット行います。

リカーブはセットポイント制、コンパウンドとW1は16射の合計点で勝敗を決します。

なお、制限時間は各チーム4射合計の制限時間は80秒です。

行射順序

Aチーム1人目1射

Aチーム2人目1射

Bチーム1人目1射

Bチーム2人目1射

Aチーム1人目1射

Aチーム2人目1射

Bチーム1人目1射

Bチーム2人目1射

これで1セット、それぞれのチームともに持ち時間は80秒

まとめ

私自身アーチェリーをやっており、障がいのある方と競技をしたこともありますが、クラス分けや細かいルールについては今回調べる中で知ることができました。
また、弓は必ず両手で扱うという概念ではなく、それぞれの選手がご自身のやり方で弓を引き、矢を放つというまさに全身を使っての一射です。
このように、各選手が身体に合わせた射ち方をすることで障がいの有無に関わらず、一緒に競技をすることのできる数少ない競技といえます。
また、アーチェリーの決勝ラウンドでは、セットポイント制や合計点でも本数が少ないために、わずかなミスが勝敗を分けるなど、最後の最後まで勝敗が分からない面白さがあります。

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参考一覧

日本パラリンピック委員会ホームページ

JPCクラス分け紹介ビデオ(Youtube)

スポーツ庁web広報マガジン パラスポーツの”クラス分け”とは何か?~JPCクラス分け情報・研究拠点~(2024年7月18日)

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