「生き木仏」という、古くから全国各地で信仰を集め、今も多くの人々が訪れる不思議な仏像があります。それは、長い年月を経てもなお自然とともに存在し続け、訪れる人々に静かな感動を与えています。この記事では、四国や山口、福井、静岡などに点在するその生木仏について、歴史や伝説、訪れる際の情報とともに紹介します。
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生き木仏とは? その特徴と目的
樹木と運命を共にする仏像
生木仏とは、自然に根を張る木の幹に直接仏像が彫られたもので、通常の木造仏像とは異なり、木が成長することで仏像も変化し、木が枯れると共に仏像も朽ち果てていくという、自然と一体化した仏様であるのが特徴です。
これらの仏像は、「自然と仏が共にある」ことを示し、木の生命力と仏の加護が一体となる特別な存在とされています。
生き木仏をはじめ、全国各地に存在する少し変わった仏像を紹介している書籍がありますので、参考にしてみてください。
全国の代表的な生き木仏【6選】
香川県観音寺市「生木地蔵尊(またたき地蔵)」
所在地:香川県観音寺市大野原町大野原1208
アクセス:JR観音寺駅から車で約15分 / 高松自動車道 大野原ICから約5分
香川県観音寺市の「生木地蔵尊」は、「生木の地蔵さん」として広く信仰されている生木仏です。
この生木地蔵尊は、天保7年(1837年)に、森安利左衛門が病弱な一人娘ナヲの回復を願い、3か月かけて彫り上げたものとして伝えられています。
そしてその後、病床にあったナヲは奇跡的に回復することができ、なんと!百歳の長寿を全うしたと言われています。
この生木地蔵尊は、今も木と共に成長し続けており、彫刻当初より10cm以上背が高くなっているとされています。
生木地蔵尊が彫られたクスノキは、樹齢約1200年、樹高30m、幹周り10mの巨木で、香川県の「ふるさとの名木」にも指定され、観音寺市指定文化財(天然記念物)にも登録されています。
また、「生木の地蔵さんに願いをかけると叶う」と言い伝えられており、全国から参拝者が訪れる場所となっています。
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地蔵尊が彫り抜かれた霊木
— 本田不二雄(ノンフィクションライター・神仏探偵) (@shonen17) August 31, 2022
生木の地蔵クス(香川県観音寺市)
生きたクスノキに彫られた地蔵菩薩を建物のなかで拝むというしくみです。#神木探偵#日本の凄い神木#地球の歩き方#神仏探偵 pic.twitter.com/Kaq7CuvPDD
愛媛県四国中央市「生木地蔵(一夜地蔵)」
所在地:愛媛県四国中央市金生町山田井
アクセス:JR伊予三島駅から車で約20分
四国中央市にある「生木地蔵」は、弘法大師ゆかりの生き木仏であり、「一夜地蔵」とも呼ばれています。
言い伝えによれば、弘法大師がこの地を訪れ、自ら仏像を彫りましたが、洪水により流されてしまったため、新たにカゴノキの大木に直接彫り直したものとされています。
一夜地蔵の伝説
この生木地蔵には、特に有名な「一夜地蔵」の伝説があります。
昔、仏師が夜中に切山に訪れ、生木に地蔵を彫り始めました。しかし、朝一番の鶏が鳴いた時点で彫るのをやめたと伝えられており、「一夜で彫られたお地蔵様」として知られ、今もなお伝説が語り継がれています。
そして、この生木地蔵には、耳の病気平癒や願掛けに特別なご利益があるとされ、多くの人々が祈願に訪れています。
また、1730年(享保16年)には仏師・鈴木正兵衛が正式に彫刻を施したという記録があり、昭和54年には地元の保存会が復元作業が行われています。
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生きた木にそのまま彫り込まれた地蔵様
— えぬびい (@enuenuenubi) June 12, 2024
これを作り出す彫り師さんの技術すごい…
全国的にも希少なモノなのに恐ろしいほどに誰も来ないような山奥にある pic.twitter.com/fTOJUr1RYO
静岡県熱海市「温泉寺の生木仏」
住所:静岡県熱海市上宿町2-19
アクセス:
JR伊東線来宮駅から徒歩9分(約600m)
JR東海道線熱海駅から徒歩17分(約1.3㎞)
静岡県熱海市の温泉寺にある生き木仏は、2024年4月に完成した、まさに現代の生き木仏といえます。
この生木仏は、倒木の危険性から伐採しようとしたところ、その切られていく姿に胸を痛めたご住職が、2024年に4か月かけて仏さまを彫っていただき、今の姿になったというのが成り立ちのようです。
▶ 詳しくは、こちらの記事をご覧ください
熱海にある開運生木仏とは?生木仏のある温泉寺について成り立ちやアクセスなどリサーチ!
ご縁
— 深雪さなえ (@Haikyo_Miyuki) May 29, 2024
横浜での、切り株の天狗さまに続き、
熱海では、仏さまに参拝出来ました。
一体は、根本から新芽が芽吹いていました!
ご縁を感じる一日となりました。#熱海 #温泉寺 #切り株 #仏さま pic.twitter.com/1IUC7eIIZn
徳島県勝浦町の「生不動」
所在地:徳島県勝浦郡勝浦町星谷字大明神45
アクセス:JR徳島駅から車で約50分
徳島県勝浦町の「生不動」は、四国八十八ヶ所霊場・立江寺の奥の院「星谷寺(星の岩屋)」にある生き木仏になります。
樹齢400年以上のクスノキの幹に彫られた不動明王像は、落雷によって幹が裂けた部分を利用して制作されたというものです。
背後の焼皮が火焔光背のように見えることから、より神秘的な存在とされています。
また、腰の病気平癒にご利益があるとされ、多くの参拝者が祈願に訪れています。
徳島県勝浦町のの風景です
— まっさん (@maruwanouen) January 26, 2024
複数の石仏は仏石という名前で呼ばれます 他の写真は星の岩屋という所の物です⭐ pic.twitter.com/kx71DDEXUt
徳島市 如意輪寺「立木観音」
所在地:徳島県徳島市多家良町中津2-2 如意輪寺
アクセス:JR徳島駅から車で約45分
徳島市の「立木観音」は、中津峰山の如意輪寺境内にある、樹高20mの「観音杉」に彫られた生き木仏です。
大正3年(1914年)、阿波人形師・横山天然居士がこの杉の木に観音像を彫刻したとされており、100年以上が経過した今、観音像は徐々に樹皮に覆われつつあり、木と一体化し始めているという、まさに生き木仏ならではの神秘的な姿を見せています。
徳島市多家良町如意輪寺の立木観音。大正時代に彫られどんどん木が呑み込んでいってるんだそうな。 #仏像 #阿波 pic.twitter.com/GlpLREPE57
— 渡仁(とにん) (@niohangya) August 31, 2015
山口県萩市「願行寺の立木薬師如来像」
所在地:〒758-0141 山口県萩市福井下4901 願行寺
アクセス:JR萩駅から車で約20分
願行寺の境内には、木喰五行上人が彫刻したとされる「立木薬師如来像」が残されています。
高さ142cmの像は、榧(かや)の大木の根元に刻まれており、左手に薬壺を持ち、右手をかざす姿が特徴と言えます。
こちらの立木薬師如来像には、「耳の病が治る」というご利益があり、像の口元に耳を当てると耳の病が平癒するとされ、「耳の薬師様」とも呼ばれ、信仰を集めています。
願行寺✨
— きたろうⅢ世🏯💣⛩️🗾🏝♨️🏮🍳 (@kitaro3sei) November 8, 2021
別名立木薬師
境内の榧の木の幹に木喰上人が薬師如来を彫り込んだ
一見、古民家風のお寺なんで、場所を間違えたと思って一度引き返してしまった
R3秋 #山口県 #萩市 #山口県の史跡 pic.twitter.com/bZszkStYgk
全国の生木仏についてのまとめ
以上、生木仏とは?熱海の温泉寺はじめ、全国の生木仏の特徴や成り立ち、その魅力、アクセスをリサーチ!(6選)をお届けいたしました。
生き木仏は、木と仏像が一体となり、共に成長していくという特別な存在です。
四国地方や山口、福井、静岡などにある生き木仏は、いずれも地元の人々に大切に守られながら、今もなお多くの参拝者の願いを受け入れています。
訪問の際には、木や仏像を傷つけることがないようにし、自然と調和した仏様の役割を意識しつつ参拝してみてください。
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